百人一首の季節の歌は、春・夏・秋・冬の風景を通して、人の心や時間の流れを表した和歌です。
桜、梅、月、雪、紅葉、ほととぎす、鹿、霜、秋風など、百人一首には季節を感じる言葉が多く登場します。
この記事では、「百人一首 春の歌」「百人一首 夏の歌」「百人一首 冬の歌」「百人一首 雪」「百人一首 桜の歌」「百人一首 梅の歌」「百人一首 月の歌」などを知りたい方に向けて、春夏秋冬の代表歌をわかりやすく整理します。
気になった歌は、個別記事で意味・現代語訳・作者・覚え方まで読めるように、百人一首の番号別記事への内部リンクも入れています。
百人一首の季節の歌を一覧で比較|春・夏・秋・冬の代表歌
百人一首の季節の歌は、単に「春の景色」「秋の景色」を描くだけではありません。
春は花の移ろい、夏は短い夜や鳥の声、秋は月・紅葉・鹿・風、冬は雪・霜・山里の静けさとして表れます。
(表は横にスクロールしてご覧ください)
| 季節 | 歌 | 作者 | 季節の言葉 | 一言でいうと |
|---|---|---|---|---|
| 春から夏 | 百人一首2番「春過ぎて」 | 持統天皇 | 春過ぎて、夏来にけらし、衣ほす | 春が過ぎ、夏が来たことを白い衣で感じる歌 |
| 春・桜 | 百人一首33番「ひさかたの」 | 紀友則 | 春の日、桜 | のどかな春の日に、桜が落ち着きなく散る歌 |
| 春・梅 | 百人一首35番「人はいさ」 | 紀貫之 | 花、昔の香 | 人の心は変わっても、梅の香は昔のままという歌 |
| 春・山桜 | 百人一首66番「もろともに」 | 前大僧正行尊 | 山桜 | 山桜に孤独な心を受け止めてもらうような歌 |
| 春・散る花 | 百人一首96番「花さそふ」 | 入道前太政大臣 | 花、嵐、雪ならで | 散る桜を雪のように見ながら、老いを感じる歌 |
| 夏・短夜 | 百人一首36番「夏の夜は」 | 清原深養父 | 夏の夜、雲、月 | 夏の夜が短く、月が雲のどこへ宿るのかと思う歌 |
| 夏・ほととぎす | 百人一首81番「ほととぎす」 | 後徳大寺左大臣 | ほととぎす、有明の月 | ほととぎすの声が消えたあと、月だけが残る歌 |
| 秋・田 | 百人一首1番「秋の田の」 | 天智天皇 | 秋の田、露 | 秋の田の仮小屋で、袖が夜露に濡れる歌 |
| 秋・鹿 | 百人一首5番「奥山に」 | 猿丸大夫 | 紅葉、鹿 | 奥山の鹿の声から秋の深まりを感じる歌 |
| 秋・月 | 百人一首23番「月見れば」 | 大江千里 | 月、秋 | 秋の月を見て、もの悲しさが広がる歌 |
| 秋・紅葉 | 百人一首17番「ちはやぶる」 | 在原業平朝臣 | 竜田川、紅葉 | 紅葉が川を紅色に染めるように見える歌 |
| 秋・山風 | 百人一首22番「吹くからに」 | 文屋康秀 | 山風、草木、秋 | 山風が草木をしおれさせ、秋の力を感じさせる歌 |
| 秋・白菊 | 百人一首29番「心あてに」 | 凡河内躬恒 | 白菊、初霜 | 白菊と初霜が見分けにくいほど白い歌 |
| 秋・夕暮れ | 百人一首71番「夕されば」 | 大納言経信 | 夕、稲葉、秋風 | 田の稲葉をそよがせる秋風を聞く歌 |
| 冬・霜 | 百人一首6番「かささぎの」 | 中納言家持 | 霜、夜更け | 霜の白さから、夜が更けたことを感じる歌 |
| 冬・雪 | 百人一首4番「田子の浦に」 | 山部赤人 | 富士、白妙の雪 | 富士山に降る雪を大きく描いた歌 |
| 冬・山里 | 百人一首28番「山里は」 | 源宗于朝臣 | 冬、山里 | 人目も草も枯れた冬の山里の寂しさを詠む歌 |
| 冬・白雪 | 百人一首31番「朝ぼらけ」 | 坂上是則 | 吉野、白雪、有明の月 | 雪と月が重なる静かな夜明けの歌 |
| 冬・川霧 | 百人一首64番「朝ぼらけ」 | 権中納言定頼 | 宇治川、川霧、網代木 | 川霧の中から冬の宇治川が見えてくる歌 |
この一覧を見ると、百人一首では秋の印象が強い歌が目立つことが分かります。
一方で、春や冬の歌は数が限られていても印象が強く、夏の歌は短い夜やほととぎすの声など、繊細な季節感で描かれています。
初心者にまず読んでほしい百人一首の季節の歌
季節の歌を初めて読むなら、情景がすぐ浮かび、季節の言葉が分かりやすい歌から入るのがおすすめです。
春なら桜、夏なら短い夜、秋なら紅葉や月、冬なら雪や霜を手がかりにすると、歌の世界に入りやすくなります。
春なら33番「ひさかたの」|桜が散るのどかな春
33番「ひさかたの」は、春の日の光がのどかなのに、桜の花がしきりに散っている歌です。
「春=明るい季節」と「花が散る不安」が同時にあるため、百人一首らしい季節感を味わえます。
夏なら36番「夏の夜は」|短い夜と月の行方
36番「夏の夜は」は、まだ宵のうちだと思っていたのに、もう夜が明けてしまったという歌です。
夏の夜の短さを、月が雲のどこに宿るのだろうという想像で表しているところが面白い一首です。
秋なら17番「ちはやぶる」|紅葉が川を染める名歌
17番「ちはやぶる」は、竜田川が紅葉で鮮やかな紅色に染まるように見える歌です。
秋の紅葉を、神代にも聞いたことがないほどの不思議な景色として描いており、百人一首の中でも特に印象に残りやすい歌です。
冬なら31番「朝ぼらけ」|月と雪が溶け合う白い朝
31番「朝ぼらけ」は、吉野の里に降った白雪を、有明の月かと思うほど美しく描いた歌です。
冬の歌ですが、寒さを強く押し出すというより、月と雪の白さが重なる静かな美しさが読みどころです。
春の歌で読む百人一首|桜・梅・春から夏への移り変わり

百人一首の春の歌では、桜や梅の花、春から夏へ変わる気配が中心になります。
ただし、春は単に楽しい季節ではありません。花が咲く一方で、散ることや時間の流れも強く意識されます。
桜の歌は「咲く」より「散る」ことに注目する
33番「ひさかたの」では、明るい春の日差しの中で桜が散ります。
66番「もろともに」では、山桜が孤独な心に寄り添う相手のように詠まれます。96番「花さそふ」では、散る桜が雪のように見え、老いていく自分の姿とも重なります。
百人一首の桜は、満開の華やかさだけでなく、散る一瞬の美しさや、そこに重なる心の動きを読むと深く味わえます。
梅の歌は香りと記憶を読む
35番「人はいさ」は、詞書や歌の背景から梅の花として読まれる歌です。百人一首の中でも、花の「香り」を感じやすい一首といえます。
人の心は昔と同じか分からないけれど、ふるさとの花の香りは昔のままだ、という感覚が込められています。桜が散る花だとすれば、梅は香りによって記憶を呼び戻す花として読めます。
2番「春過ぎて」は季節の境目を読む
2番「春過ぎて」は、春が過ぎて夏が来たらしいと、干してある白い衣から気づく歌です。
春と夏の境目を、説明ではなく目に見える白さで伝えているところが魅力です。季節の歌では、暦だけでなく、景色や暮らしの中の変化に注目すると読みやすくなります。
夏の歌で読む百人一首|短い夜・月・ほととぎす
百人一首では、夏らしさが前面に出る歌は限られます。
そのぶん、36番「夏の夜は」と81番「ほととぎす」は、短い夜や鳥の声によって夏の気配を繊細に伝える代表歌です。
36番「夏の夜は」は、短夜の感覚が面白い
夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
雲のいづこに 月宿るらむ
現代語訳:夏の夜は、まだ宵のうちだと思っているうちに明けてしまいました。月は雲のどこに宿るのでしょうか。
この歌では、「夏の夜は短い」という感覚が、月の行き先への想像として表されています。
夜が短いことを理屈で言うのではなく、月が宿る場所もないまま朝になってしまうように見せるところに、和歌らしい面白さがあります。
81番「ほととぎす」は、声のあとに残る月を読む
81番「ほととぎす」は、ほととぎすの鳴いた方を眺めると、そこには有明の月だけが残っているという歌です。
夏の鳥の声と、夜明け前の月が重なり、音が消えたあとの静けさが生まれます。夏の歌ですが、派手な暑さではなく、早朝の余韻を味わう一首です。
秋の歌で読む百人一首|月・紅葉・鹿・秋風が多い理由

百人一首では、秋の印象が強い歌がとても目立ちます。
秋は、月、紅葉、鹿、風、露、霧など、和歌でよく使われる自然モチーフが多く、心の動きを重ねやすい季節だからです。
月の歌は秋のもの悲しさを引き出す
23番「月見れば」は、秋の月を見ることで、何か特別な理由がなくてももの悲しくなる心を詠んでいます。
また、79番「秋風に」は、たなびく雲の切れ間からもれる月の光を詠んだ歌です。秋の月は、明るいだけでなく、空の広さや心の静けさを感じさせます。
紅葉の歌は色だけでなく動きも見る
17番「ちはやぶる」は、紅葉が竜田川を鮮やかな紅色に染めるように描きます。
69番「あらし吹く」では、三室山の紅葉が川へ散り込み、竜田川を錦のように見せます。どちらも紅葉の歌ですが、17番は驚き、69番は山から川へ広がる動きが魅力です。
鹿と秋風は、秋の寂しさを音で伝える
5番「奥山に」では、鹿の声が秋の山奥の気配を深めます。
71番「夕されば」では、稲葉をそよがせる秋風の音が、夕暮れの田園を静かに描きます。秋の歌は、見える景色だけでなく、聞こえる音にも注目すると読みやすくなります。
冬の歌で読む百人一首|雪・霜・山里の静けさ
百人一首の冬の歌は、雪や霜の白さ、山里の寂しさ、川霧の静けさが印象的です。
秋の歌のように感情が大きく揺れるというより、白さや寒さの中で、時間が止まったような感覚が生まれます。
雪の歌は白さの違いを読む
4番「田子の浦に」は、富士山の雪を遠く大きく描く歌です。
31番「朝ぼらけ」は、吉野の雪を有明の月と見まがうほど白く描きます。同じ雪でも、4番は雄大な眺め、31番は夜明けの静けさとして読むと違いが分かります。
霜の歌は夜の深まりを感じる
6番「かささぎの」は、霜の白さを見て、夜が更けたことを感じる歌です。
天の川にかかる橋のイメージも重なり、冬の空気の冷たさと幻想的な美しさが同時に伝わります。
冬の山里は、自然が少ないからこそ寂しい
28番「山里は」は、冬の山里の寂しさを詠んだ歌です。
花や紅葉のような華やかな自然がないからこそ、人の訪れも草も枯れた静けさが際立ちます。冬の歌では、「何があるか」だけでなく「何がなくなったか」を読むことも大切です。
季節の歌は恋・旅・人生と重ねて読むと深くなる
百人一首の季節の歌は、春夏秋冬の分類だけで終わりません。
春の花は人生のはかなさ、夏の短夜は時間の速さ、秋の月は孤独、冬の雪は静けさのように、季節が心の動きと重なっています。
- 春:花の美しさと、散っていく時間を読む
- 夏:短い夜や鳥の声から、一瞬の余韻を読む
- 秋:月・紅葉・鹿・風から、もの悲しさや深まりを読む
- 冬:雪・霜・山里から、白さや静けさを読む
また、季節の自然が恋を表すこともあります。たとえば、花の散る様子は失われる時間を、川や風は気持ちの動きを、月は遠い人への思いを連想させます。
かるたや暗記にも役立つ季節の歌の覚え方
百人一首の季節の歌は、春夏秋冬で分けると覚えやすくなります。
歌番号だけで丸暗記するより、季節の言葉と情景をセットにすると、上の句を聞いたときに思い出しやすくなります。
春は「花」と「香り」で覚える
春は、桜や梅の歌をまとめて覚えると分かりやすいです。
33番は桜が散る春、35番は梅の香り、66番は山桜、96番は散る花と老いというように、同じ花でも役割を分けると記憶に残ります。
夏は代表歌を絞って覚える
夏は、36番「夏の夜は」と81番「ほととぎす」をまず押さえましょう。
短い夜と、ほととぎすの声という二つのイメージを持てば、夏の歌はかなり整理しやすくなります。
秋は「月・紅葉・鹿・風」で分ける
秋の歌は多いので、月、紅葉、鹿、風に分けて覚えるのがおすすめです。
23番は月、17番と69番は紅葉、5番は鹿、22番と71番は風というように整理すると、秋の歌が混ざりにくくなります。
冬は「白さ」と「静けさ」で覚える
冬は、雪・霜・白さ・山里の静けさを手がかりにしましょう。
4番、6番、28番、31番、64番を冬のまとまりとして覚えると、季節分類がしやすくなります。
このテーマとあわせて読みたい百人一首
季節の歌をさらに広げて読むなら、表で紹介しきれなかった歌にも注目してみましょう。
百人一首26番「小倉山」は、小倉山の紅葉をもう一度天皇に見せたいと願う秋の歌です。紅葉を「誰かに見せたい景色」として読むと印象が深まります。
百人一首47番「八重むぐら」は、荒れた宿にも秋が来たことを詠む歌です。華やかな秋ではなく、人の訪れがない場所の秋を味わえます。
69番「あらし吹く」は、三室山の紅葉が竜田川を錦にする歌です。17番「ちはやぶる」と比べると、紅葉の動きがよく分かります。
百人一首79番「秋風に」は、秋風と雲の切れ間からもれる月の光を詠んだ歌です。秋の月の透明感を味わいたい人に向いています。
百人一首87番「村雨の」は、通り雨のあと、霧が立つ秋の夕暮れを描いた歌です。雨・露・霧の余韻を読む入口になります。
百人一首の季節の歌についてよくある質問
百人一首で一番多い季節は何ですか?
数え方や分類によって変わりますが、百人一首では秋の印象が強い歌がかなり目立ちます。月、紅葉、鹿、秋風、露など、和歌で心の動きを表しやすい自然が多いからです。
百人一首の春の歌は桜だけですか?
桜の歌は重要ですが、梅の香りを思わせる35番「人はいさ」や、春から夏への移り変わりを詠む2番「春過ぎて」もあります。春は花だけでなく、季節の変化として読むと広がります。
百人一首に夏の歌は少ないのですか?
夏らしさが前面に出る歌は限られます。ただし、36番「夏の夜は」や81番「ほととぎす」は、短夜や鳥の声で夏らしさをよく表しています。
冬の歌は雪の歌だけですか?
雪の歌は代表的ですが、霜、冬の山里、川霧なども冬の季節感を作ります。白さだけでなく、静けさや人の少なさにも注目すると読みやすくなります。
桜の歌と梅の歌はどう違いますか?
桜は散る美しさやはかなさと結びつきやすく、梅は香りや昔の記憶と結びつきやすいです。同じ春の花でも、歌の中で果たす役割が違います。
季節の歌なのに恋や人生の意味もありますか?
あります。花は老いや無常、月は孤独、川や風は心の動きと重なることがあります。季節の風景を通して、人の感情を読むのが和歌の面白さです。
百人一首の季節の歌は音で聴くと覚えやすい
百人一首の季節の歌は、文字で読むだけでなく、音で聴くと情景が浮かびやすくなります。
「春過ぎて」「夏の夜は」「秋の田の」「朝ぼらけ」のように、初句だけで季節が感じられる歌もあります。
春夏秋冬に分けて聴くと、同じ百人一首でも、季節ごとのリズムや言葉の明るさ、静けさの違いが分かります。暗記にも鑑賞にも、音で味わうことはとても役立ちます。
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まとめ:百人一首の季節の歌は春夏秋冬で分けると読みやすい
百人一首の季節の歌は、春・夏・秋・冬で分けると、歌の情景や意味が整理しやすくなります。春は桜や梅、夏は短い夜やほととぎす、秋は月・紅葉・鹿・風、冬は雪・霜・山里の静けさが中心です。
ただし、季節の歌は単なる風景描写ではありません。花ははかなさ、月は孤独、紅葉は華やかさ、雪は静けさのように、季節の自然を通して人の心を読むところに百人一首の面白さがあります。
- 春の歌は、桜・梅・春から夏への移り変わりに注目すると読みやすい
- 夏の歌は、36番「夏の夜は」と81番「ほととぎす」を押さえたい
- 秋の歌は、月・紅葉・鹿・秋風などモチーフごとに分けると覚えやすい
- 冬の歌は、雪・霜・山里・川霧の白さや静けさを味わうとよい
- 桜の歌は、咲く美しさだけでなく、散ることや時間の流れも読む
- 梅の歌は、香りと昔の記憶を結びつけて読むと分かりやすい
- 季節の歌は、恋・旅・人生の感情とも重なる
- 暗記するときは、春夏秋冬と季節の言葉をセットで覚えるとよい
まずは、自分の好きな季節から一首を選んで読んでみてください。百人一首は、季節を通して人の心を味わう古典文学として、何度読んでも新しい発見があります。
参考文献
- 島津忠夫訳注『百人一首』角川ソフィア文庫
- 有吉保訳注『百人一首 全訳注』講談社学術文庫
- 久保田淳訳注『百人一首』岩波文庫
- 『新日本古典文学大系 古今和歌集』岩波書店
- 『新日本古典文学大系 新古今和歌集』岩波書店
- 小町谷照彦『古今和歌集と歌ことば表現』岩波書店
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この記事を書いた人
運営者の杉本 洋平です。大学で日本文学を専攻し、卒業後も古典文学の一次資料や研究書を参照しながら独学を続けています。「作品名は知っているけれど中身がわからない」という入口の壁をなくしたくて、このサイトを立ち上げました。
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