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百人一首75番「契りおきし」の意味と現代語訳|藤原基俊・させもが露を解説

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百人一首75番「契りおきし」は、約束の言葉を命のように頼みにして待っていたのに、今年の秋もむなしく過ぎてしまうと嘆いた失望の歌です。
この歌の読みどころは、恋の歌ではなく、息子の登用をめぐる約束が果たされなかった悲しみを詠んでいるところにあります。「させもが露」は、ただの草木の露ではなく、古歌を踏まえた約束めいた言葉と、そのはかなさを表しています。
この記事では、「契りおきし」の意味・現代語訳・読み方・覚え方・作者の藤原基俊、そして「させもが露」「命にて」「秋もいぬめり」の読みどころを、初心者にもわかりやすく解説します。

💡 古典は「耳」から入ると、思ったより近くなる

原文に身構えてしまいやすい古典こそ、プロの朗読で聴くと人物の感情や場面の空気がそのまま入ってきます。通勤や家事の時間が、そのまま古典世界への没入時間に変わります。

百人一首75番「契りおきし」の原文・読み方をわかりやすく解説

契りおきし
させもが露を
命にて
あはれ今年の
秋もいぬめり

歴史的仮名遣いに沿った読み方は「ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり」です。
現代の発音に近づけると、「あはれ」は「あわれ」に近く読まれます。百人一首の読み上げでは「ちぎりおきし させもがつゆを」の流れを耳で覚えるとよいでしょう。
この歌は、男女の恋を詠んだ歌ではありません。藤原基俊が、自分の子の昇進・登用に関わる約束が果たされなかったことを嘆いた歌として知られます。
(表は横にスクロールしてご覧ください)
項目 内容 ポイント
歌番号 百人一首75番 約束を頼みにして待ったのに、今年の秋も過ぎたと嘆く歌
作者 藤原基俊 平安時代後期の歌人。源俊頼と並ぶ歌人として知られる
読み方 ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり 現代発音では「あはれ」は「あわれ」に近い
上の句 契りおきし させもが露を 命にて 約束してくださった言葉を命のように頼みにして、という意味
下の句 あはれ今年の 秋もいぬめり ああ、今年の秋もむなしく過ぎてしまうようだ、という嘆き
決まり字 ちぎりお 四字決まり。42番「契りきな」と聞き分ける
出典 『千載和歌集』雑上・1023番前後 子の登用をめぐる約束が果たされなかった失望の歌。歌番号は底本により表記が異なる場合がある

「契りおきし」の意味を現代語訳でわかりやすく解説

「契りおきし」を現代語訳すると、次のようになります。

約束してくださった、させも草の露のようなお言葉を命のように頼みにしてきたのに、ああ、今年の秋もむなしく過ぎてしまうようです。

「契りおきし」は、約束しておいた、約束してくださった、という意味です。ここでは、藤原忠通が基俊に与えたとされる期待の言葉を指します。
「させもが露」は、さしも草に置く露、またはそれに重ねられた恵みの言葉を表します。露は美しくもはかないものなので、頼みにしていた約束の危うさも感じられます。
この「させも」は、古歌に見える「しめぢが原のさしも草」を踏まえた表現とされます。藤原忠通が、基俊に期待を持たせる返事をしたため、その言葉が「させもが露」として詠まれているのです。
「命にて」は、命として、命のように頼みにして、という意味です。単なる期待ではなく、それだけを頼りにして待っていた切実さが表れています。
「あはれ」は、ああ、という深い嘆きの言葉です。ここでは感動よりも、失望や落胆の響きが強く出ています。
「秋もいぬめり」は、秋も過ぎてしまうようだ、という意味です。「いぬ」は過ぎ去るという意味で、「めり」はそう見える、そうであるようだという推量・婉曲の助動詞です。

藤原基俊とは?約束への失望を歌にした平安後期の歌人

作者の藤原基俊は、平安時代後期の歌人です。百人一首では、74番の源俊頼朝臣に続いて登場する歌人としても覚えられます。
藤原基俊は、当時の歌壇で重んじられた人物で、和歌の技法や古典的な表現に深く通じていました。源俊頼とは同時代の代表的な歌人として並べて語られることもあります。
75番「契りおきし」は、華やかな恋や自然を詠んだ歌ではなく、約束が果たされなかった現実への嘆きです。息子の登用をめぐる期待と失望が背景にあるため、百人一首の中でも少し異色の一首といえます。
この歌では、感情を直接ぶつけるだけでなく、「させもが露」「命」「秋もいぬめり」という言葉を使い、約束への信頼がむなしく消えていく感覚を丁寧に表しています。

なぜ秋が過ぎることを嘆くのか?息子の登用と果たされなかった約束

「契りおきし」は、恋の相手への恨みではなく、約束を守ってくれなかった相手への失望を詠んだ歌です。
背景には、藤原基俊の息子である僧の光覚が、興福寺の維摩会の講師に選ばれることを望んでいたという事情があります。基俊は、藤原忠通にその後押しを頼んだとされます。
忠通は、期待を持たせるような返事をしたと伝えられます。その背景には、次のような古歌を踏まえた言葉があったと説明されます。

なほ頼め
しめぢが原の
さしも草
わが世の中に
あらむ限りは

この古歌は、「なお頼みなさい。私がこの世にいる限りは」という意味合いで読まれます。つまり、忠通の返事は、基俊に「頼みにしてよい」と思わせるものだったのです。
そのため「させもが露」は、単なる草の露ではありません。古歌の「さしも草」と、忠通の約束めいた言葉を踏まえた、頼みにしていた恵みの言葉として読む必要があります。
しかし、願いはかなわず、今年の秋も過ぎていきます。つまり、登用の機会がまた失われてしまったのです。
この歌の悲しさは、単に願いがかなわなかったことではありません。信じて待っていた言葉が、結果として頼りにならなかった。その失望が、静かな恨みとしてにじんでいます。

「させもが露」「命にて」「秋もいぬめり」を読む——約束を命にした失望

「契りおきし」は、語句の背景を知らないと意味がつかみにくい歌です。特に「させもが露」「命にて」「秋もいぬめり」を押さえると、約束を頼みにした基俊の失望が見えてきます。

「契りおきし」は、頼みにしていた約束を指す

「契る」は、約束するという意味です。
「契りおきし」は、以前に約束してくださった、という意味で読めます。
この約束が果たされなかったからこそ、歌全体に深い失望が生まれています。

「させもが露」は、古歌を踏まえた恵みの言葉

「させも」は、古歌の「さしも草」を踏まえて読むと理解しやすい言葉です。
忠通の返事が「なお頼め」と期待を抱かせるものだったため、基俊はその言葉を「させもが露」と表しました。
露は命をつなぐようにも見えますが、すぐに消えるものでもあります。そのはかなさが、頼みにした約束の不確かさと響き合います。

「命にて」は、ただの期待ではなく命綱だったことを示す

「命にて」は、命として、命のように頼みにして、という意味です。
ここでは、約束の言葉が基俊にとってどれほど大きな支えだったかを表します。
それだけに、約束が果たされない落胆も深くなっています。

「秋もいぬめり」は、今年も機会が過ぎたという嘆き

「いぬ」は、過ぎ去るという意味です。
「秋もいぬめり」は、秋も過ぎてしまうようだ、という意味になります。
ただ季節が過ぎるだけではなく、願っていた機会が今年も失われたことを表しています。

「あはれ」は、静かな恨みと落胆を含む

「あはれ」は、しみじみとした感動にも使われますが、ここでは「ああ」という嘆きの響きが強い言葉です。
怒鳴るような恨みではなく、待っていた時間がむなしく終わることへの落胆として読むと自然です。
この一語があることで、歌全体に諦めに近い悲しみが広がります。

覚え方は「契り=約束、させもが露=命綱、秋も過ぎた」で押さえる

「契りおきし」は、約束・露・命・秋の順番で覚えると分かりやすい歌です。
「契りおきし」で約束、「させもが露」で頼みにした言葉、「命にて」で命綱のように信じたこと、「あはれ今年の秋もいぬめり」で今年もむなしく過ぎた嘆きへつなげましょう。
  • 歌番号で覚える:百人一首75番は「契りおきし」
  • 作者で覚える:藤原基俊は平安後期の歌人
  • 背景で覚える:息子の登用をめぐる約束が果たされなかった歌
  • 重要語で覚える:「契り」は約束
  • 重要語で覚える:「させもが露」は、頼みにしていた恵みの言葉
  • 読みどころで覚える:命のように頼った約束がむなしく終わる失望
  • 決まり字で覚える:「ちぎりお」の四字決まり
記憶フレーズにするなら、「ちぎりお=契りを命に、秋も過ぎる」と覚えると、決まり字と歌意がつながります。
かるたでは、42番「契りきな」と同じ「契り」で始まります。42番は「ちぎりき」、75番は「ちぎりお」まで聞き分けましょう。

テスト対策は5点でOK——契り・させもが露・いぬめり・決まり字

「契りおきし」は、背景と語句の意味が問われやすい歌です。まずは次の5点を押さえると整理しやすくなります。
  • 恋歌ではなく、息子の登用をめぐる失望の歌
  • 「契りおきし」は、約束してくださったという意味
  • 「させもが露」は、古歌を踏まえた恵みの言葉と、そのはかなさを表す
  • 「いぬめり」は、過ぎ去ってしまうようだという意味
  • 決まり字は「ちぎりお」。42番「ちぎりき」と聞き分ける
あわせて、出典は『千載和歌集』雑上・1023番前後、息子の登用をめぐる約束が果たされなかった失望の歌として整理しておきましょう。
試験で差がつく1点目:この歌は恋の歌ではありません。子の登用をめぐる約束への失望を詠んだ歌です。
試験で差がつく2点目:「させもが露」は、単なる自然描写ではなく、忠通の約束めいた言葉と結びつきます。
試験で差がつく3点目:「秋」は季節の美しさではなく、人事の機会が今年も過ぎてしまう時間を示しています。

42番・74番と比べて読む——恋の契りと、報われない約束

「契りおきし」とあわせて読みたいのは、42番の清原元輔「契りきな」です。42番は恋の誓いが破られた歌、75番は子の登用をめぐる約束が果たされなかった歌です。同じ「契り」でも、恋の誓いと社会的な約束では意味合いが違います。
74番の源俊頼「うかりける」と比べると、74番は初瀬に祈ったのに恋がつらくなる歌、75番は約束を頼みにしたのに機会が過ぎてしまう歌です。どちらも、信じたものが報われない苦さを詠んでいます。
71番の大納言経信「夕されば」と読むと、71番は源経信、74番はその子の源俊頼、75番は同時代の歌人藤原基俊というように、平安後期の歌人たちの並びが見えてきます。
関連作品としては、この歌の出典である『千載和歌集』が重要です。また、藤原基俊や源俊頼の歌風を知ると、平安後期の和歌の技巧と人間関係がより見えやすくなります。

百人一首75番「契りおきし」についてよくある質問

この歌は恋の歌ですか?

恋の歌ではありません。息子の登用をめぐる約束が果たされなかったことを嘆いた歌として読まれます。

「させもが露」は本当に草の露のことですか?

表面上は草に置く露を思わせますが、ここでは相手の約束めいた言葉を重ねています。古歌の「さしも草」を踏まえると、頼みにした言葉の意味が見えやすくなります。

なぜ「命にて」とまで言っているのですか?

その約束を、ただの期待ではなく命綱のように頼みにしていたからです。息子の将来に関わる願いだったため、失望も大きくなっています。

「秋もいぬめり」は季節の歌として読むべきですか?

秋という季節は出てきますが、中心は季節の美しさではありません。今年も機会が過ぎてしまったという失望を表しています。

約束した相手を責めている歌ですか?

直接激しく責めるより、信じて待っていたのに今年もむなしく過ぎた、という静かな恨みと落胆の歌です。

大人が読むと面白いポイントはどこですか?

期待させられた言葉を信じて待った時間そのものが、最後には失望に変わるところです。人間関係の約束の重さが、現代にも通じます。

決まり字「ちぎりお」で覚える——約束を命にしたのに秋も過ぎた

百人一首は、意味だけでなく、声に出して読むことで言葉の流れが残りやすくなります。
「契りおきし」は、「ちぎりお」で歌を取り、「させもが露を 命にて」で約束を命綱のように頼みにしたことを受け取り、「あはれ今年の 秋もいぬめり」で失望へ進む歌です。
決まり字「ちぎりお」、重要語「させもが露」「命にて」、結びの「秋もいぬめり」を耳で確認したい方は、音声付きかるたや初心者向け参考書も活用すると理解が深まります。

📖 作品の読みどころが頭に入った今こそ、耳で入るいちばんいいタイミング

解説を読んで内容がつかめている今こそ、プロの朗読で聴くと作品世界が最も鮮明に浮かび上がります。この関心が続いているうちに、一度耳で確かめてみてください。

まとめ:百人一首75番「契りおきし」は何を詠んだ歌なのか

百人一首75番「契りおきし」は、約束してくれた言葉を命のように頼みにして待っていたのに、今年の秋もむなしく過ぎてしまうと嘆いた歌です。
この歌の魅力は、恋や自然ではなく、信じていた約束が果たされなかった人間的な失望を詠んでいるところにあります。「させもが露」という美しい言葉の奥に、約束のはかなさと、待ち続けた時間の重さが込められています。
  • 作者は藤原基俊
  • 出典は『千載和歌集』雑上・1023番前後
  • 「契りおきし」は、約束してくださったという意味
  • 「させもが露」は、古歌を踏まえた恵みの言葉を表す
  • 「秋もいぬめり」は、今年も機会が過ぎてしまう嘆き
  • 決まり字は「ちぎりお」の四字決まり
「契りおきし」は、約束が破られた怒りを大声でぶつける歌ではありません。命のように頼みにしていた言葉が、今年の秋も実を結ばなかった。その静かな落胆に注目すると、藤原基俊の一首がぐっと深く読めます。

参考文献

  • 『新編日本古典文学全集 小倉百人一首』小学館
  • 『新編日本古典文学全集 千載和歌集』小学館
  • 『新日本古典文学大系 千載和歌集』岩波書店
  • 『新編日本古典文学全集 大和物語』小学館
  • 島津忠夫『百人一首』角川ソフィア文庫

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