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百人一首10番「これやこの」の意味とは?現代語訳・読み方・覚え方と作者の蝉丸を解説

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百人一首10番「これやこの」は、都と東国を行き来する人々が出会い、別れていく逢坂の関を詠んだ歌です。
「行く人」と「帰る人」、「知っている人」と「知らない人」、「別れ」と「逢う」が、一つの関所に集まるところに、この歌の面白さがあります。
この記事では、「これやこの」の意味・現代語訳・読み方・覚え方・作者の蝉丸、そして逢坂の関がなぜ重要なのかを、初心者にもわかりやすく解説します。

💡 古典は「耳」から入ると、思ったより近くなる

原文に身構えてしまいやすい古典こそ、プロの朗読で聴くと人物の感情や場面の空気がそのまま入ってきます。通勤や家事の時間が、そのまま古典世界への没入時間に変わります。

百人一首10番「これやこの」の原文・読み方をわかりやすく解説

これやこの
行くも帰るも
別れては
知るも知らぬも
逢坂の関

歴史的仮名遣いでは「これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき」と表記されます。
現代の発音に近づけると、「これやこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき」です。「かへる」は現代では「かえる」、「あふ坂」は表記上は「あふさか」ですが、現代の読みでは「おうさか」となります。
「逢坂の関」は、都と東国方面を結ぶ交通の要所として知られた関所です。この歌では、そこを通る人々の出会いと別れが中心に描かれています。
なお、百人一首では第三句を「別れては」と読む形で覚えますが、『後撰和歌集』諸本では「別れつつ」とするものもあります。初心者は、まず百人一首の形で覚えれば十分です。
(表は横にスクロールしてご覧ください)
項目 内容 ポイント
歌番号 百人一首10番 逢坂の関を行き交う人々を詠んだ歌
作者 蝉丸 逢坂の関とともに語られる伝説的な人物
歴史的仮名遣い これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき 「かへる」「あふ坂」の表記に注意
現代の発音に近い読み これやこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき 「あふ坂」は現代では「おうさか」と読む
上の句 これやこの 行くも帰るも 別れては 行く人・帰る人・別れが並ぶ
下の句 知るも知らぬも 逢坂の関 知人も他人も交差する関所として描く
決まり字 これ 「これ」の2文字で確定する二字決まり
出典 『後撰和歌集』雑一・1089番 諸本では「別れつつ」とする本文異同もある

「これやこの」の意味を現代語訳でわかりやすく解説

「これやこの」を現代語訳すると、次のようになります。

これがまあ、都から行く人も帰る人もここで別れ、知っている人も知らない人もここで出会うという、あの逢坂の関なのだなあ。

「これやこの」は、「これがあの有名な」という驚きや詠嘆を含む言い方です。目の前にある逢坂の関を見て、「これこそが、あの逢坂の関なのだ」と感じています。
「行くも帰るも」は、都から出ていく人も、都へ帰ってくる人も、という意味です。逢坂の関が、多くの人の往来する場所だったことが分かります。
「知るも知らぬも」は、知っている人も知らない人も、という意味です。親しい人との再会だけでなく、見知らぬ人とのすれ違いまで含んでいます。
この歌の中心は、逢坂の関が「別れの場所」であると同時に「出会いの場所」でもあることです。人が行き交う境界には、必ず別れと再会の両方があります。

蝉丸とは?逢坂の関とともに語られる伝説的な歌人

作者の蝉丸は、平安時代前期の人物とされますが、詳しい生涯ははっきり分かっていません。
後世には、盲目の琵琶の名手、逢坂の関の近くに住んだ隠者のような人物として語られることがあります。ただし、これらは伝説的な要素が強く、すべてを史実として断定することはできません。
百人一首では、8番の喜撰法師、9番の小野小町に続いて、10番に蝉丸の歌が置かれています。いずれも実像に不明点が多く、後世の伝説とともに読まれてきた人物です。
蝉丸は、境界の人物として読むと印象が深まります。実像が見えにくい人物が、都と東国の境界である逢坂の関を詠む。その重なりによって、この歌にはどこか謎めいた余韻が生まれています。

逢坂の関とは?都と東国を結ぶ境界の関所

逢坂の関は、現在の滋賀県大津市付近にあったとされる古代の関所です。都から近江・東国方面へ向かう道筋にあり、多くの人が行き交う重要な場所でした。
また、逢坂の関は、鈴鹿の関・不破の関と並んで重要な関として意識されることがあります。都の外へ出る道を押さえる、歴史的にも象徴的な場所でした。
関所は、ただ通行を管理する施設ではありません。都を出る人にとっては別れの場所であり、都へ戻る人にとっては帰着の入口でもあります。
この歌では、逢坂の関が「行く人」と「帰る人」、「知っている人」と「知らない人」が交差する場所として描かれています。

表現技法は対句・掛詞・体言止め——短い歌に人の往来を収める

「これやこの」は、分かりやすい言葉でできていますが、構造はとても巧みです。特に大切なのは、対句、掛詞、反復、体言止めです。

「これやこの」の「や」は詠嘆を表す

「これやこの」の「や」は、感動や驚きを表す働きを持ちます。
単に「これはこの逢坂の関です」と説明しているのではありません。「これがまあ、あの有名な逢坂の関なのだなあ」と、目の前の場所に対する感慨がこもっています。

「行くも帰るも」「知るも知らぬも」は対句

「行く」と「帰る」、「知る」と「知らぬ」は、それぞれ反対の意味を持つ言葉です。
これらを並べることで、逢坂の関を通る人の多さと、そこに生まれるさまざまな人間関係が表れています。
特定の一人ではなく、行く人も帰る人も、知人も他人も通っていく。逢坂の関が、人の往来の場として一気に広がります。

「逢坂」は地名と「逢う」が重なる掛詞

「逢坂」は地名です。同時に、「逢う」という言葉を強く感じさせる名前でもあります。
掛詞とは、一つの音に複数の意味を重ねる和歌の技法です。この歌では、地名の逢坂に、「人と逢う」という意味が重なっています。
しかも上の句には「別れては」があります。つまり、別れと逢うことが、一つの関所の名前の中で響き合っているのです。

「も」の反復が人の多さを感じさせる

この歌には、「行くも」「帰るも」「知るも」「知らぬも」と、「も」が繰り返されます。
この反復によって、さまざまな人が次々に通っていく感じが生まれます。短い歌なのに、逢坂の関がにぎやかな交通の場として浮かび上がるのは、この「も」のリズムがあるからです。

最後を「逢坂の関」で止める体言止め

この歌は、最後を「逢坂の関」という名詞で止めています。これを体言止めといいます。
体言止めによって、説明が言い切られすぎず、場所そのものの印象が強く残ります。行く人も帰る人も、知る人も知らない人も、すべてが最後に「逢坂の関」という一点へ集まる形になっています。

覚え方は?「これやこの」を逢坂の関・対句・二字決まりで覚える

「これやこの」は、逢坂の関を中心に、人の動きをセットで覚えると分かりやすい歌です。
行く人、帰る人、別れる人、知っている人、知らない人、出会う人。そのすべてが逢坂の関に集まると考えましょう。
  • 歌番号で覚える:百人一首10番は「これやこの」
  • 作者で覚える:蝉丸は、逢坂の関と結びついて語られる伝説的な人物
  • 場所で覚える:逢坂の関は、都と東国方面を結ぶ境界の関所
  • 構造で覚える:「行く/帰る」「知る/知らぬ」「別れる/逢う」の対比
  • 技法で覚える:「逢坂」は地名と「逢う」が重なる掛詞
  • 決まり字で覚える:「これ」の2文字で確定する二字決まり
  • 下の句で覚える:「これ=これがあの逢坂」「しる=知るも知らぬも」とつなげる
語呂合わせにするなら、「これを聞いたら、知るも知らぬも逢坂」と覚えると、上の句から下の句へつながります。
かるたでは「こ」だけではまだ確定しません。「これ」まで聞くと、この10番の歌だと判断できます。

テストで問われやすい「これやこの」のポイント

「これやこの」は、逢坂の関の意味、対句、掛詞、体言止め、作者の伝説性が問われやすい歌です。現代語訳だけでなく、言葉の組み立てを押さえましょう。
  • 作者は蝉丸
  • 歌番号は百人一首10番
  • 出典は『後撰和歌集』雑一・1089番
  • 百人一首では「別れては」、諸本では「別れつつ」とする場合もある
  • 「これやこの」は、これがあの有名な、という詠嘆を含む表現
  • 「行くも帰るも」は、都から行く人も帰る人もという意味
  • 「知るも知らぬも」は、知っている人も知らない人もという意味
  • 「逢坂」は地名であり、「逢う」を響かせる掛詞としても読める
  • 「行く/帰る」「知る/知らぬ」「別れる/逢う」の対比が重要
  • 最後を名詞「逢坂の関」で止める体言止めも押さえる
  • 決まり字は「これ」で、二字決まり
試験で差がつく1点目:「逢坂」は、地名としての逢坂の関であると同時に、「逢う」を響かせる掛詞として読めます。地名の説明だけで終わらせず、出会いの意味まで押さえましょう。
試験で差がつく2点目:「行くも帰るも」「知るも知らぬも」は対句的な表現です。反対の意味を持つ言葉を並べることで、人の往来の多さを表しています。
試験で差がつく3点目:「これやこの」は、単なる「これは」ではありません。「これがあの逢坂の関なのだなあ」という詠嘆を含んでいます。
試験で差がつく4点目:最後の「逢坂の関」は体言止めです。場所の名前で止めることで、関所そのものの印象が強く残ります。
本文異同で差がつくポイント:百人一首では「別れては」と覚えますが、『後撰和歌集』諸本では「別れつつ」とするものもあります。入門段階では百人一首本文を優先して覚えましょう。

別れと再会が同じ場所で起こる——「これやこの」の読みどころ

「これやこの」の面白さは、逢坂の関が一つの意味に固定されないところにあります。
都を出る人にとっては、逢坂の関は別れの場所です。都へ帰る人にとっては、戻ってくる入口でもあります。
誰かにとっての別れの場所は、別の誰かにとっての再会の場所でもあります。逢坂の関は、人が通過する場所であると同時に、出会いと別れの意味が反転する場所なのです。
現代でいえば、駅や空港、改札のような場所です。出発する人、帰ってくる人、見送る人、偶然すれ違う人。そうした人の流れを、蝉丸は一首の中で見せています。

この歌とあわせて読みたい百人一首・関連作品

「これやこの」とあわせて読みたいのは、7番の阿倍仲麻呂「天の原」です。7番は異国と故郷の距離、10番は都と東国の境界を詠んでおり、どちらも移動と距離が大きなテーマです。
また、8番の喜撰法師「わが庵は」と並べると、都から少し離れた場所に立つ人物の視点が見えてきます。8番は宇治山、10番は逢坂の関と、都の外側にある場所が重要です。
関連作品としては、『後撰和歌集』がもっとも近い作品です。もし公開済み記事がない場合は、『古今和歌集』や『新古今和歌集』など、勅撰和歌集全体の流れから読むと、和歌がどのように受け継がれていったかを理解しやすくなります。

百人一首10番「これやこの」についてよくある質問

「これやこの」は恋の歌ですか?

恋の歌ではありません。逢坂の関を行き交う人々の出会いと別れを詠んだ歌です。

「これやこの」はどう訳せばよいですか?

「これがあの有名な」と訳すと自然です。「や」によって、目の前の逢坂の関を見た感動や驚きが加わります。

逢坂の関は何が重要なのですか?

都と東国方面を結ぶ境界の関所だった点です。人が通る場所だからこそ、別れと再会が重なる舞台になります。

蝉丸はどんな人ですか?

実像には不明点が多い人物です。後世には、盲目の琵琶の名手や逢坂の関に関わる人物として語られました。

「逢坂」は掛詞ですか?

地名としての逢坂の関を指すと同時に、「逢う」という意味も響きます。別れと出会いが重なるこの歌では、とても重要な言葉です。

「これやこの」の決まり字は何ですか?

決まり字は「これ」です。「こ」で始まる歌は複数ありますが、「これ」まで聞くと、この歌に確定します。

百人一首と『後撰和歌集』で本文は違いますか?

百人一首では「別れては」と読まれますが、『後撰和歌集』諸本では「別れつつ」とするものもあります。かるたや入門学習では、百人一首本文を優先して覚えましょう。

音で覚える「これやこの」——二字決まりと逢坂の関のリズム

百人一首は、意味だけでなく、声に出して読むことで言葉のリズムが残りやすくなります。
「これやこの」は、「行くも帰るも」「知るも知らぬも」と、同じ形の言葉が繰り返されるため、音で覚えやすい歌です。
二字決まり「これ」の暗記、逢坂の関の背景、対句・掛詞・体言止めの確認をまとめて学びたい方は、音声付きかるたや初心者向け参考書も活用すると理解が深まります。

📖 作品の読みどころが頭に入った今こそ、耳で入るいちばんいいタイミング

解説を読んで内容がつかめている今こそ、プロの朗読で聴くと作品世界が最も鮮明に浮かび上がります。この関心が続いているうちに、一度耳で確かめてみてください。

まとめ:百人一首10番「これやこの」は何を詠んだ歌なのか

百人一首10番「これやこの」は、逢坂の関を行き交う人々の出会いと別れを詠んだ歌です。
行く人も帰る人も、知っている人も知らない人も、逢坂の関で別れ、また出会います。特定の一人の感情ではなく、多くの人の人生が交差する場所を見つめているところに、この歌の魅力があります。
作者の蝉丸は、実像がはっきりしない伝説的な人物です。その謎めいた人物像も、逢坂の関という境界の場所とよく響き合っています。
  • 「これやこの」は百人一首10番の歌
  • 作者は蝉丸
  • 出典は『後撰和歌集』雑一・1089番
  • 百人一首では「別れては」、諸本では「別れつつ」とする本文異同もある
  • 「これやこの」は、これがあの有名な、という詠嘆を含む表現
  • 「行く/帰る」「知る/知らぬ」「別れる/逢う」の対比が重要
  • 「逢坂」は地名であり、「逢う」を響かせる掛詞としても読める
  • 最後の「逢坂の関」は体言止め
  • 決まり字は「これ」で、二字決まり
「これやこの」は、関所という一つの場所に、人の往来と人生の交差を重ねた一首です。逢坂の関を、ただの地名ではなく「出会いと別れの境界」として読むと、歌の面白さがぐっと深まります。

参考文献

  • 『新編日本古典文学全集 小倉百人一首』小学館
  • 『新編日本古典文学全集 後撰和歌集』小学館
  • 『新日本古典文学大系 後撰和歌集』岩波書店
  • 島津忠夫『百人一首』角川ソフィア文庫
  • 有吉保『百人一首全訳注』講談社学術文庫

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